唯一者とその所有

マックス・シュテルナー、この著者を知ってる方はまずいない。僕もごく最近になって初めて知り、既存で発行されている書物がこの一冊のみというのも極めてまれ。

誕生日が同じ(僕とね)、それと死に方が「毒蛇に噛まれて野垂れ死んだ」というだけで親近感を持ったためか、この排他的で読者を選ぶ文体に意外とスンナリ滑りこめました。

若者や一定以上の学識がない方を初めから相手にするつもりがシュテルナーにはありません。ゼロです。この暴力的な意志が圧巻。実は内容も最初から最後まで和やかではありません。なのに比喩は機知に富み、軽やかさも有する文体は天賦の才としかいえません。

このサイトは、つまるところマックス・シュテルナーの紹介サイトです。

他者に・神だの祖国だのといった類いのものに「酔い痴れる」ところの青年に対して、成年は、より多く自らを中心にするということ。

とてもエゴイストであり、後世のひとからはアナーキズムの権現みたいに評価されている面もありますが、主旨はアナーキーでも文体は一定でないのに透明な純粋さがどこからも香り立ち、古代ギリシャの修辞学を否定的にとらえつつ、引用はしごくまっとうに文に挟み込みます。

うつせみの人の身に、健康は最高の善。これについでは、美。第三は、騙らずにえられた富にして、第四は、若き友どちと交わる喜びなり。    <ギリシャ詩人 シモニデス>

この引用の最後の和訳の「若き友どち」は片岡啓治訳で誤訳ではありません。訳者ですらついていけない文体の魅惑さに、安易で従順な単語がはめ込めない俊立した高峰がたじろいでいます。