レヴィ=ストロース「悲しき熱帯」

半世紀前に、構造主義としてもてはやされた「ものの見方」の慧眼がレヴィ=ストロース。「もの」は「者」でも「モノ」でも、要するに人間がどう対象を見ているか、を未開の民族をタネにして論説している美文が「悲しき熱帯」

もう、タイトルの「悲しき熱帯」と、言いたいことのギャップだけで一本勝ちです。ノーベル文学賞も授与され、世に抵抗して同じくノーベル文学賞を与えられたのに、受賞を拒否したジャン=ポール・サルトルを、結果的にはコテンパにやっつけてるのだけど、 レヴィ=ストロース はその文体は熱くてとてもスマートです。

第一章を「出発」として、書き出しが「私は度や探検家が嫌いだ。…..」としながら、第四章「力の探求」では「私は本当の旅の時代に生まれ合わせていればよかったと思う」

くぅ~~、です。 レヴィ=ストロース の手出しの仕方は、たいがい後出しジャンケンで無敗を誇った感が否めませんが、無双ではあります。 レヴィ=ストロース の切りくちに「ハッと」した多くの読者は、自分の主義主張の「マナー」をとりあえず鏡に映して整える作法をしたんちゃうかなぁー。

因みに、2019年末からの新型コロナウイルス騒ぎの、かなりコアの部分を僕は レヴィ=ストロース に帰依して考えを2020年4月にまとめ上げました。その後、90%以上の予想精度で世界は変遷しました。彼は後発ではあるけれど本物の開拓者であった。