A fresh, green breast of the new world. 華麗なるギャツビーから

A

スコット・フィッツジェラルド。若いころ、こんなカッチョいい作者名と書名が「華麗なるギャツビー」とかだけでもう、ページをめくるの回避するぐらい、親和性のない存在の代表格がこれ。華麗なるナンチャラって、よくまー取ってつけたような和名をタイトルにしたもんだ。かつての有名車「マークⅡ」みたいなノリだったのか。

若干、近寄りがたさを緩和させてくれたのは、村上春樹が翻訳することの極意と楽しみは、この本の最初と最後を訳するために翻訳修業を重ねてきた、って前置きしながら上梓した「グレードギャツビー」のその部分を読んだとき。

僕は村上春樹のデビュー時に10代の最後を過ごし、「風の歌を聴け」が最初で最高の金字塔であって、「ノルウェーの森」を最後に村上春樹は才能を蕩尽しつくした、と思っています。

けだし、「グレードギャツビー」の最初と最後の訳文は凄いに尽きる。両方合わせても4ページぐらいだし、本屋の立ち読みでも、いわゆる全身にエクスタシーが走ります。ホントです。

A FRESH, GREEN BREAST OF THE NEW WORLD.

タイトルにあげたこの英文は最後のクライマックスの少し前に書かれています。

A FRESH, GREEN BREAST OF THE NEW WORLD.

これは、日本語に訳された文節からの逆読みで、これ原文ではなんて書かれているんだろうってウナらせるほどドクドクさせる村上春樹の妙技ここにあります。(興味があれば、読んでみてね)

絶対にそこに行ったことがなければ、住んだことがなければ、そこの歴史をえこひいきしていないと味わえない文学があります。アメリカはタナボタで世界に現れた国家です。その原体験、つまり「ここの地理環境、めちゃくちゃエエやん!!…..ワテらラッキー!」ってニューヨークのロングアイランドの価値を最初の発見したヒトの興奮を表現した英文がこれ。このbreastを日本語の「乳房」と訳せざるを得ないけれど、ルビを打って「ちぶさ」ってするの、極上だけどなぁ~