Latest stories

存在の耐えられない軽さ、と広大過ぎて切ないロシア

ミラン・クンデラの「存在の耐えられない軽さ」は小説音痴の僕でも半分は読めても、「不滅」は意外に全然ダメ。クンデラの「不滅」はゲーテをモチーフにファウスト的な世界観を描写している書物なので、ファウストを得意なオハコにしている僕としては楽勝と思ってもページが全く進まない。 最近になり、スターリンへのプチマイブームから「ロシア」を俯瞰できるよう、2021年秋にガガっと齧り食いみたくロシアを試食してみると、ロシアは深く寒い。そんで広い。昭和の世界地図はほぼ...

キッシンジャー回想録「中国」

ヘンリー・A・キッシンジャーは現在98歳、日本で言えば戦後の高度成長期に属するというよりは、安保世代に自分は帰納するという方たちには有名で、その他ではアメリカを代表するユダヤ人というぐらいの認識が一般的だと思います。ついでに言えば、ニクソン、フォードという凡庸で強欲な二人のアメリカ合衆国大統領を「補佐」したというより「連れ歩いた」、知的な偉丈夫でしょうか。...

世人皆酔い、我独り醒める

「世人皆酔い、我独り醒める」by 屈原。屈原は今から2500年前、中国の秦の張儀の謀略を見抜き、踊らされようとする懐王を必死で諫めたが受け入れられず、楚の将来に絶望して入水自殺した、春秋戦国時代を代表する詩人です。...

油断大敵、油断快適

およそ飽食の世の中になってこのかた、医療ではメタボリックシンドロームだの、健康産業ではダイエット出来なきゃ人間じゃない、ぐらいのキャッチコピーで皆様、生業を潤わせています。 痩せろ、ダイエットしろって脅迫概念を旗印の「お腹にクビレ」を作る幻想は、まだまだ隆盛を極めそうですが、医療のメタボはというと踊り場を過ぎて科学技術が欲望を凌駕できるレベルに達しています。 もう、糖尿病を人類は簡単にコントロール出来ている。...

平和時おける国家とマスゴミ

ついぞ、文章を書く際にマスコミと普通に書くのは憚(はばか)られ、キチンとマスゴミと書くようにしています。僕にはマスゴミ各社が社是に掲げる崇高そうなキャッチコピーは、野党が無責任に羅列するマニフェストより厚顔無恥だと思っています。 よく、報道がマスメディアを介して時の権力が暴走するのを監視する役割りを担っているのだから、それをもってマスゴミが存在する最低限の意義はあるとエクスキューズされます。...

唯一者とその所有

マックス・シュテルナー、この著者を知ってる方はまずいない。僕もごく最近になって初めて知り、既存で発行されている書物がこの一冊のみというのも極めてまれ。 誕生日が同じ(僕とね)、それと死に方が「毒蛇に噛まれて野垂れ死んだ」というだけで親近感を持ったためか、この排他的で読者を選ぶ文体に意外とスンナリ滑りこめました。 若者や一定以上の学識がない方を初めから相手にするつもりがシュテルナーにはありません。ゼロです。この暴力的な意志が圧巻。実は内容も最初から最後まで和やかではありません。なのに比喩は機知に富み、軽やかさも有する文体は天賦の才としかいえません。...

大量に製造される美について

美とは異なるけれど、かつては「圧倒的な」被造物が発する凄みを<オーラ>とウォルター・ベンヤミンは定義しました。例えばダヴィンチの「モナリザ」やエジソンが完成させた最初の「電球」とかです。 もちろん、創作されたその時代のその瞬間を想像できない方はこのブログを読んでも時間の無駄です。ピンとくる方は「モナリザ」と「電球」を比喩にあげただけで、ベンヤミンが放つ無二のインスピレーションに感覚が少し麻痺します。ペンヤミンは 「圧倒的な」被造物 でも複製されるとオーラ は薄れる、と指摘しています。要するにタイミングであって、現代の複写印刷の登場をもって...

ノーベル生理学・医学賞の価値

2021年度のノーベル賞が発表されています。 一般的に、ノーベル賞は発表される順番でその価値は高いとされています。つまり、初日に生理学医学賞、ついで物理学賞、化学賞、ときて(ここまでが科学分野が対象で評価が高い)、その後の文学賞、経済学賞、平和賞は、まーね、、、客観的に評価がどうのこうのでなく、なんかの記念碑って感じでしょか。...

A fresh, green breast of the new world. 華麗なるギャツビーから

A

スコット・フィッツジェラルド。若いころ、こんなカッチョいい作者名と書名が「華麗なるギャツビー」とかだけでもう、ページをめくるの回避するぐらい、親和性のない存在の代表格がこれ。華麗なるナンチャラって、よくまー取ってつけたような和名をタイトルにしたもんだ。かつての有名車「マークⅡ」みたいなノリだったのか。 若干、近寄りがたさを緩和させてくれたのは、村上春樹が翻訳することの極意と楽しみは、この本の最初と最後を訳するために翻訳修業を重ねてきた、って前置きしながら上梓した「グレードギャツビー」のその部分を読んだとき。...